「小説家になろう!」のサイトを見ない人は知らないかもしれませんが、かのサイトには18禁版もあります。
男性向けエロに特化したノクターンノベルズ、女性向けエロに特化したムーンライトノベルズ、エロはあるがメインではない作品の受け皿であるミッドナイトノベルズの3つですね。といってもきっちり分かれているわけではなく、作品がどこに合っているかの判断はユーザーの匙加減によるのですが。
今回ご紹介するのは、ノクターンノベルズへの投稿作品を原作とするタイトル。
ゾンビのあふれる世界で俺だけが襲われない
雑コラ遊びの的になっている例の広告で有名なマンガと原作を同じくするゲームです。エロとホラーって相性いいと思うのですが、エロゲーだとサスペンスホラーに寄りがちな印象ですね。
ゾンビもののエロゲーというと、SPEEDの『姦染』シリーズ以来の遭遇かもしれません。あれは噛むタイプのゾンビではなく、エロいことをしてくるゾンビ(美少女も有)にやられると感染してのちのち死ぬ設定なので、ゾンビものとしては変化球でしたが。
広告ばかり有名になったせいか、この女の子は一部で「抱かせろちゃん」などと呼ばれているそうですね。響きが面白くていいですね、抱かせろちゃん。ちなみに本名は深月です。抱かれます。
ノクターンノベルズに掲載している原作小説は件のコミカライズの前に書籍化、ゲーム化もしているんです。キャラクターデザインは、正直コミカライズ版のほうが個性が特徴づけられていて可愛いかも。ゲーム版も絵は整っているし、クリーチャーも迫力あって格好いいのですが、深月の服についてる謎ボンボリがなんだか気になるんですよね。お洗濯したらもげちゃうじゃん。
ゲームは分岐の少ないビジュアルノベルで、話の区切りのいいところで区切って販売しています。本編を収録する『1』『2』『3』があるほか、本編の合間のエピソードやIFエピソードが入ったショートストーリー集の『0』を加えた全巻パックも発売されています。
書籍にもゲーム版とは別の追加エピソードを収録しているので、内容が気に入ったのであればどれを買っても損にはならないかと。
原作は完結していませんが、ゾンビ映画でいうとエンディングとして違和感ないところまで区切りはついています。ゲームはその区切りまで――というか現時点での最新話までを収録していて、さらにアフターエピソードもあるので未完っぽさはありません。
ストーリーをかんたんに説明しますね。
本作はタイトルからわかるとおり、突如としてゾンビが蔓延るようになった世界を舞台としています。
未曽有のゾンビパニックの発生に少し遅れて気づいた主人公は、一緒に避難しようとした近所の人がゾンビに襲われたのを見て、自分だけがゾンビに襲われない体質であることに気づきます。何故か無傷のままゾンビ化しているお隣の巨乳美女・時子ちゃん(ゾンビ化済)を精神安定剤兼性処理係として抱きながら、食料集めなどするうちに周囲の状況やゾンビの生態を知っていくという流れ。
深月とは大型スーパーに立ち寄った際に遭遇し、彼女と幼い弟たちに食料を提供しつつ情報を得ようと交流を持ちます。
深月は見目麗しく、頭も良い少女ですから、平和な頃は周囲の男たちから自然と好意を抱かれて、求めずとも助けられてきたのを自覚しているわけですね。性格は素直でいい子ですが、身を置いていた環境のために自然とプライドは高くなっていると。
ですが、ヒーロー願望を持たず、冷徹に判断を下す主人公は深月をまったく特別視しません。欲望は時子ちゃんに満たしてもらっていますし。ゆえに、控えめながらさらなる食料を求める深月の、ただ助けを求める姿に苛立ちすら覚えます。そして、助けが欲しければそちらも尽くせということで「抱かせろ」と要求する訳ですね。
はじめは嫌々ながらプライドと折り合いをつけて受け入れる深月ですが、のちのち心情も態度も変化していきます。
時子ちゃん(ゾンビ) 牧浦先生(女医)
広告のインパクトからネタとして扱われていますが、ごく真っ当に面白いんですよね。ゾンビものとしても完成度高いですし。筆者は原作小説をお気に入りに登録していて、書籍版も持っています。
ノクターンノベルズはプロもアマチュアも好きなものを好きに投稿しているサイトなので作品は玉石混交といった感がありまして、物によってはエロまでたどり着けずに更新が止まったり、ヒロインが主人公スキスキbotと化していたり、人物の感情の変化が謎だったりすることもざらですが、本作に関しては問題なく楽しめるお話のひとつだと言えます。読ませる文章で人物の背景もきちんと感じられますし、ヒロインが主人公に惹かれる流れもきちんと描かれていますよ。
最初からゾンビな時子ちゃんはともかく、深月や後に避難先で出会う女医といったヒロイン勢はゾンビ化しないので、そこが不安で読むかどうか迷っていた人も安心して読んでみてください。
個人的にはホラーってヒステリー状態の人々を中心にぐだぐだする展開が基本になっている部分があると思うのです。パニック状態を維持するためなのか、登場人物に突然博愛精神が芽生えてゾンビを殺したがらなくなったりとか、急にわめき始めたりとか、藁にも縋る状況でも一度使った武器はあっさり捨てたりとか。
しかしながら本作は主人公が普通のゾンビには襲われないぶん精神的に安定していて、行動もぐだぐだもたもたしないところに好感がもてますね。それでいて超人なわけでもないのがいい。
ちなみにゲーム版で追加された別ルートでは、時子ちゃんを含めたゾンビハーレムと共に暮らしたり、時子ちゃんを連れて生き残りの集落をめぐって行商する結末に至ったりするので、見たい方はぜひプレイしてみてください。
本編では深月が優遇されているぶん、本編と違う道に進む追加ルートでは自然とゾンビな時子ちゃんと暮らしていくお話になりがちなのでしょうね。本編の合間を補完する追加エピソードは時子ちゃん以外のヒロインのお話ももちろん楽しめます。ゲームの全巻パックはミドルプライスでダウンロード販売されているので、よろしければどうぞ。広告で話題になったからか、パッケージ版はプレミア価格になってしまっているので、ダウンロード版が断然おすすめです。
さて、それではこの辺で。また次回もよろしくお願いします。